一棟マンションにおける減価償却費の計算法
不動産を運用していく際に「減価償却費」という言葉を耳にすることもあるでしょう。減価償却資産は、不動産投資で必要経費として計算するものの1つです。
この仕組みを理解しておくことで不動産投資で出費を減らすことにつながり、投資を有利に働かせることができます。それでは、減価償却費はどのように計算すれば求められるのでしょうか?
減価償却費を求めるために必要なポイントとは?
それでは事例を1つ用意したので、一棟マンションの減価償却費の算出方法をシミュレーションしてみましょう。
鉄筋コンクリート(RC)のマンションを購入したとして、建物の購入価格を1億円、築年数を20年とします。一棟マンションの土地が不動産全体の35% (3500万円)、もう半分が建物部分です。
さらにこの建物部分65%(6500万)のうち、建物躯体が建物全体の65%(4225万)、建物設備部分が建物全体の35%(2275万円)として、この物件の減価償却費を求めていきます。
●減価償却可能な部分を見分ける
減価償却できる箇所は「建物躯体部分か設備部分」に限定されており、「土地」は減価償却できません。
今回は前述した事例のように分割したものとして計算しますが、実際は不動産会社が作成した売買契約書を参考にしつつ、減価償却が可能な部分とそうでない部分とを分割していくところから始めます。
●計算方法を考える
次に減価償却費の計算方法として「定額法」か「定率法」のどちらかを選択します。建物躯体と平成28年4月以降に取得した物件の建物設備の償却方法は定額法でしか計算できないため、現在は定額法が一般的な計算方法となっています。定額法とは減価償却が適用される金額を耐用年数に応じて、均等に金額を配分して計上していく方法です。今回はこの定額法を使って物件の減価償却費を求めていきましょう。
●保有している物件の耐用年数を割り出す
今回の事例では鉄筋コンクリートの物件なので、新築物件であれば建物躯体の耐用年数は47年、建物設備の耐用年数は15年と決まっています。
中古物件の計算方法は「新築の場合の耐用年数 - 経過年数 × 0.8」で求められます。これを今回の事例と照らし合わせてみると、躯体部分が「47 – 20 × 0.8 = 22年」となります。
建物設備は「15 – 20 × 0.8 = -1年」となってしまいますが、課税の場合は安全使用できる法定耐用年数を超えて(多くは修繕して)使用しているだけなので、耐用年数と同じ15年となります。
●計算式と照らし合わせて減価償却費を算出していく
減価償却費は「取得価格 × 利用可能年数に応じた償却率」で求めることができるため、今回の事例をもとに算出してみましょう。償却率は利用可能年数に応じた数字が国税庁のホームページで掲載されているため、その数値に合った償却率を用いて計算していきます。
今回の建物躯体の金額が4225万円、建物設備の金額が2275万円です。
建物躯体の耐用年数は22年で、定額法を用いた償却率を見ると0.1という数値、一方設備部分の耐用年数は15年分で償却率は0.143です。これらを躯体・設備それぞれの価格に掛け合わせた額が減価償却費です。
したがって建物躯体の減価償却費が4225万円 × 0.1 = およそ422万円、建物設備の減価償却費は2275万円 × 0.143 = およそ325万円、したがって建物の減価償却費はおよそ747万円となります。
減価償却費を理解し、節税効果を高める
減価償却を知ることは、節税を考える上でとても重要です。減価償却費は実際に費用として支出することなく必要経費として計上することができるため、計算上は「総収入 < 必要経費」となっていても黒字運営をすることができるケースも少なくありません。このため減価償却費を理解した上で不動産を運営していくことが、節税効果を高める鍵となるのです。